ローディングコントロールの設定が正しいかどうか考えたことがありますか?


Posted by CSTジャパン on 2017/12/01 6:00:00


Have you ever wondered?

ラボの進捗報告会あるいは学位論文発表会で発表するために、これまでの実験ノートからデータを集めています。あなたは興味深い仮説を立て、ウェスタンブロッティングで標的タンパク質を特異的に認識する抗体を使って実験したところ、バンドの分子量は正確で、標的タンパク質の発現は予想通りに変化しています。あなたは自信満々にプレゼンしました。しかし、ミーティング参加者から、こう指摘されてしまいました。「ローディングコントロールは?」と。


新たなウェスタンブロッティング実験を計画したり、文献に掲載されたウェスタンブロッティングデータを解釈したりする際、ウェスタンブロッティングのバンドの比較には以下の2点について注意する必要があります。

1) 各レーンにライセートは等量ロードされていますか?
2) シグナル強度は線形検出範囲にありますか?

サンプル間のばらつきを補正し、等量ロードされていることを担保するために、しばしば、β-ActinやGAPDHのようなローディングコントロール・ハウスキーピングタンパク質と呼ばれる細胞内タンパク質のウェスタンブロッティングも同時に行われます。

ローディングコントロールとして使われる代表的なタンパク質に対するCSTの抗体をご確認ください。

Loading Control
Protein

Molecular
Weight

Rabbit Monoclonal
Antibodies

Mouse Monoclonal
Antibodies

Vinculin 124 kDa Vinculin (E1E9V)
XP® #13901
α-Actinin 100 kDa α-Actinin (D6F6) 
XP® #6487
β-Tubulin 55 kDa β-Tubulin (9F3) #2128 β-Tubulin (D3U1W) #86298
β-Actin 45 kDa β-Actin (D6A8) #8457 β-Actin (8H10D10)
#3700
GAPDH 37 kDa GAPDH (D16H11)
XP® #5174
GAPDH (D4C6R)
#97166
Cofilin 19 kDa Cofilin (D3F9)
XP® #5175
Histone H3 17 kDa Histone H3 (D1H2) XP®
 #4499
Histone H3 (96C10) #3638

 

理論的には、ハウスキーピングタンパク質の量は細胞数に比例すると考えられますが、ノーマライズに1種類のタンパク質しか使わない場合、誤った判断に繋がる可能性があります (1)。1つのローディングコントロールを使うことが一般的ですが、複数使うことでばらつきが小さくなるため、理想的には、5つのローディングコントロールの使用が最適と言われています (2, 3)。

ローディングコントロールタンパク質は標的タンパク質よりもはるかに多量に存在することが多いため、同じ希釈率で両者を検出しようとすると、残念ながら、より多量に存在するタンパク質のシグナルがサチュレーションしてしまい、線形検出範囲を超えてしまうことがあります。こうなると、もはやライセートが等量ロードされているかどうかがわからず、実験結果を間違って解釈してしまう恐れもあるのです。

こちらの記事もご覧ください:ウェスタンブロットを失敗した場合の費用

また、場合によっては、オーバーローディングやサチュレーションによってバンドが乱れたり、HRP標識抗体が局所的に化学発光試薬を使い切って「焼け焦げた」り、「白抜けした」バンドが観察されることがあります。これはペルオキシダーゼ活性が高すぎることによって生じる副産物で、膜上に茶色の斑点として観察されます。下図はその極端な例です。

ROI 021417 Cleaved Casp1(Asp296) (1)-1

 

しかし、ブロットに「奇妙な」バンドや茶色の斑点がないからといって、そのデータが線形検出範囲にあるとは限りません。コントロールバンドが問題なさそうに見えても、サチュレーションしている可能性があるのです (2)。ローディングコントロールと標的タンパク質が線形検出範囲にあるかを検証するには、同じゲルに一定範囲の希釈系列でサンプルをロードするか、複数のゲルを同時に転写して転写効率のばらつきの度合いを確認する必要があります (2, 3)。特に、発現量の高いローディングコントロールの場合は、シグナルの直線性を担保するために、ライセートのロード量、一次抗体濃度、化学発光の露光時間の検討を行う必要があります。下図は、HNF1とGAPDHについて、直線性のあるシグナルを得るために露光時間を検討した例です。

HNF1A-GAPDH-10-+-83-sec_c.gif

 

複数の細胞株についてHNF1α (D7Z2Q) Rabbit mAb #89670 (左)、GAPDH (D16H11) XP® Rabbit mAb #5174 (右) のウェスタンブロッティングを行い、異なる露光時間でのバンドを比較

 

ウェスタンブロッティングのシグナル強度は、検出方法によっても大きく変わります。ECLシグナルをCCDカメラで検出すれば、フィルムよりもダイナミックレンジを広くできます。また、ソフトウェア設定によりサチュレーションしたシグナルを赤色のピクセルとして表示できます。HRP標識二次抗体の代わりに蛍光標識二次抗体を用い、蛍光スキャニングを行えば、サチュレーションしやすいという化学発光固有の性質を回避し、より良好なデータを取得することも可能です。

こうしたアプローチを採用すれば、少ない希釈系列のサンプルで実験をデザインすることができますが、最新の優れたテクノロジーにアクセスできない場合でも、ロード量を揃えたり、事前にダイナミックレンジの検討実験を行うことで、伝統的なECLとフィルムを使用しても良好なデータを取得することができます。

とはいえ、複数のローディングコントロールを使う実験は、多くの時間と試薬を必要とします。代替の手段として、各サンプルレーンにロードしたトータルタンパク質量の測定があります。ゲルもしくはメンブレンを染色して、各レーンの全バンド (1)、あるいはいくつかの特徴的なバンド (3) を可視化し、レーン間のタンパク質量のばらつきを予測します。事前に、採用する染色がウェスタンブロッティング実験に影響がないことを確認しておくか、トータルタンパク質量の測定用とウェスタンブロッティング用に別々にゲルを用意しておくことをお勧めします。

多くの大学院生、ポスドクの皆さんにとって、ウェスタンブロッティングの実験は「ルーティン」に感じられるかもしれません。しかし、ウェスタンブロッティング実験のデータを解釈する時には (どんな実験にも言えることですが)、あらゆる細部に落とし穴が潜むことを肝に銘じてください。とりわけ、サンプル調製、転写条件、一次抗体等の問題を注意深く考慮することで、落とし穴を回避するのに役立ちます (2, 4, 5)。

そして結果を公開する時には、他の人が実験結果を正確に再現できるように、詳細な情報の提供が大切です。

 

「WBガイド」には、実験のコントロールの他、様々な役立つ情報が掲載されています。

WBガイドをダウンロードする

 References:

  1. Eaton SL, Roche SL, Llavero Hurtado M, Oldknow KJ, Farquharson C, Gillingwater TH, Wishart TM (2013) Total protein analysis as a reliable loading control for quantitative fluorescent Western blotting. PLos One 8(8):e72457.
  2. Janes KA (2015) An analysis of critical factors for quantitative immunoblotting. Sci. Signal. 8(371): rs2. 
  3. McDonough AA, Veiras LC, Minas JN, Ralph DL (2015) Considerations when quantitating protein abundance by immunoblot. Am J Physiol Cell Physiol. 308(6):C426-33. 
  4. Ghosh R, Gilda JE, Gomes AV (2014) The necessity of and strategies for improving confidence in the accuracy of western blots. Expert Rev Proteomics. 11(5):549-60. 
  5. Gorr TA, Vogel J. (2015) Western blotting revisited: critical perusal of underappreciated technical issues. Proteomics Clin Appl. 9(3-4):396-405. 

 

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