Autophagy:細胞の自食作用


Posted by CSTジャパン on 2017/05/15 6:00:00


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こんな言い方をするとギョッとする方もいらっしゃるかもしれません。「今ちょうど、あなたの細胞は自分自身を食べているところですよ!」1960年代、Christian de Duveは、この現象をギリシャ語の”auto” (自己) と”phagein” (食べる) から、“autophagy” (自食作用) と名付けました。彼はのちに、細胞生物学分野の功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。この単語、あなたは英語で“aw-tof-a-gee”と発音しますか?それとも“auto-fay-gee”と発音しますか?実際のところ、トマトが”tom-ay-tow”でも”tom-ah-tow”でも通じるのと同様に、どちらの発音でも正しく、de Duve自身も「autophagyという言葉は作ったけれども、発音までは作っていないよ」と言及しています。


オートファジーとは、バルクの細胞質成分 (異常なタンパク質や、古くなったり損傷を受けたりしたオルガネラ) を分解する機構であり、その代謝物はリサイクルされると考えられています。正常な細胞でも恒常性維持のために基底レベルでオートファジーが起こっていますが、栄養飢餓や低酸素状態、ERストレスなどのストレス条件下では生存のためのメカニズムとして誘導されます。オートファジーは数多くの生理的あるいは病理的な現象に関与することが知られていますが、近年、複雑で高度に制御されたオートファジーシグナルの理解がますます加速してきています。

歴史的には、哺乳類のオートファジーシグナリングに関する知見は、酵母を用いた研究に端を発します。哺乳類のオートファジーは酵母から高度に保存されていることがわかっています。15個のオートファジー関連遺伝子 ATGは酵母を用いた遺伝学的スクリーニングにより同定され、これらの遺伝子の変異はオートファジー不全を引き起こします (1)。現在では、36を超えるATGコア遺伝子が酵母で報告されています。哺乳類のオートファジー関連タンパク質の名前の多くが酵母のカウンターパートに由来し、これが哺乳類のオートファジー経路の多くのタンパク質が”AtgX”と呼ばれる由縁です。

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栄養飢餓のオートファジーシグナリング
アミノ酸やグルコース欠乏といった栄養飢餓ストレスに応答して、隔離膜と呼ばれる二重膜構造が細胞内に形成され、細胞質成分を取り囲むように伸長していきます。最終的に細胞質成分 (カーゴ) を取り囲んだ膜が閉じてオートファゴソームと呼ばれる構造を作ります。さらに、オートファゴソームはリソソームと融合し、オートリソソームを形成します。リソソームは酸性条件下で活性をもつ様々な分解酵素を膜に包んだオルガネラで、このリソソームの酵素によりカーゴは分解され、その分解産物はその細胞のために栄養素として再利用されます。

ULK1 - 栄養センシングとオートファゴソーム形成を結びつける橋
オートファゴソームの形成に先立って、オートファジーシグナル経路はULK1、ULK2、FIP200Atg101ATG13から構成されるULK1複合体 (哺乳類ではULK複合体、酵母ではATG1複合体) の活性化によって誘導されます (2)。ULK1複合体は、栄養・エネルギーセンサーのmTORAMPKからのシグナルをオートファゴソームの形成へ結びつける橋としての役割を果たします。 ULK1とULK2は高度にリン酸化されることが知られており、実に40以上のリン酸化部位が報告されています (3)。活性化されると、隔離膜上のULK1複合体は集まってULK1 punctaを形成し、他のいくつかの複合体を呼び寄せますが、この過程の詳しいことはあまりよくわかっていません (4)。

ULK1によるオートファジーの制御
ULK1のリン酸化はオートファジー制御におけるキーメカニズムであり、AMPKmTORがULK1をリン酸化するキナーゼであることはだいぶ前から知られています。実際、特徴的なリン酸化イベントがこの2つのタンパク質に触媒され、オートファジー制御に重要な役割を担っています。栄養飢餓条件において、AMPKは活性化され、一方でmTORは不活性化されます。この時、AMPKは、ULK1のSer317Ser467Ser555、Ser574、Ser637、Ser777をリン酸化し、オートファジーを誘導します。栄養が豊富な条件においては、AMPKが不活性化される一方でmTORは活性化され、ULK1と相互作用してSer757をリン酸化します。これによりAMPKによるULK1の活性化を妨げ、ULK1とAMPKの相互作用を妨害します。この状況下では、オートファジーは「スイッチオフ」の状態です (5, 6)。

オートファジーシグナルのハブであることに加えて、ULK1がコアオートファジータンパク質の中で唯一のセリン/スレオニンキナーゼであることも注目すべきポイントです。この事実に関わらず、どのタンパク質がULK1によってリン酸化されるかはほとんど知られていません。近年、EganらによってULK1のコンセンサスリン酸化モチーフが報告されました (7)。彼らはULK1の基質を同定するために、このモチーフを含むヒトプロテオームを検索しました。予想通りではありますが、Atg13、Vps34Beclin-1といった多くのコアオートファジータンパク質がその中に見つかりました (7)。

Vps34 (Class III PI3 Kinase) はもう一つの必要不可欠なオートファジータンパク質であり、シグナル経路の重要な制御因子です (8)。Vps34、Beclin-1、p150Atg14からなるVps34複合体は、ULK1複合体の直接的な下流にあります。実際、ULK1によるBeclin-1のSer15のリン酸化はオートファジーに必要です (9)。

オートファジーシグナル経路を解明することは、オートファジーがどのように細胞の恒常性維持に寄与しているのか、また、がんや糖尿病、神経変性疾患においてどのようにその制御不全が起きているのかをより深く理解する助けになります。ULK1のような必要不可欠なタンパク質を抑制してオートファジーを阻害することが、これらの病気の治療に結びつくのでしょうか?それはまだわかりませんが、間違いなく重要なアイディアとなるでしょう。

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References:

  1. Tsukada M, Ohsumi Y (1993) Isolation and characterization of autophagy-defective mutants of Saccharomyces cerevisiae. FEBS Lett. 333(1-2), 169–74.
  2. Ganley IG, Lam du H, Wang J, Ding X, Chen S, Jiang X (2009) ULK1.ATG13.FIP200 complex mediates mTOR signaling and is essential for autophagy. J. Biol. Chem. 284(18), 12297–305.
  3. Bach M, Larance M, James DE, Ramm G (2011) The serine/threonine kinase ULK1 is a target of multiple phosphorylation events. Biochem. J. 440(2), 283–91.
  4. Itakura E, Mizushima N (2010) Characterization of autophagosome formation site by a hierarchical analysis of mammalian Atg proteins. Autophagy 6(6), 764–76.
  5. Kim J, Kundu M, Viollet B, Guan KL (2011) AMPK and mTOR regulate autophagy through direct phosphorylation of Ulk1. Nat. Cell Biol. 13(2), 132–41.
  6. Egan DF, Shackelford DB, Mihaylova MM, Gelino S, Kohnz RA, Mair W, Vasquez DS, Joshi A, Gwinn DM, Taylor R, Asara JM, Fitzpatrick J, Dillin A, Viollet B, Kundu M, Hansen M, Shaw RJ (2011) Phosphorylation of ULK1 (hATG1) by AMP-activated protein kinase connects energy sensing to mitophagy. Science 331(6016), 456–61.
  7. Egan DF, Chun MG, Vamos M, Zou H, Rong J, Miller CJ, Lou HJ, Raveendra-Panickar D, Yang CC, Sheffler DJ, Teriete P, Asara JM, Turk BE, Cosford ND, Shaw RJ (2015) Small Molecule Inhibition of the Autophagy Kinase ULK1 and Identification of ULK1 Substrates. Mol. Cell 59(2), 285–97.
  8. Jaber N, Dou Z, Chen JS, Catanzaro J, Jiang YP, Ballou LM, Selinger E, Ouyang X, Lin RZ, Zhang J, Zong WX (2012) Class III PI3K Vps34 plays an essential role in autophagy and in heart and liver function. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109(6), 2003–8.
  9. Russell RC, Tian Y, Yuan H, Park HW, Chang YY, Kim J, Kim H, Neufeld TP, Dillin A, Guan KL (2013) ULK1 induces autophagy by phosphorylating Beclin-1 and activating VPS34 lipid kinase. Nat. Cell Biol. 15(7), 741–50.

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