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がんの特性:無秩序な複製による不死化


Posted by Cell Signaling Technology Japan on 2019/10/15 6:00:00


がん細胞は、未分化の幹細胞様の表現型を取り戻して無制限な細胞分裂能力と代謝的適応性を獲得することで悪条件でも生存が可能になります。

このような変化には様々なパスウェイが関与していますが、HippoとWntの2つの因子が無秩序な複製による不死化に重要な役割を果たすことが分かっています。今回の記事では、このようながん細胞の特性に関与する様々なパスウェイの中からHippoシグナル伝達Wntシグナル伝達にフォーカスします。

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Hippoシグナル伝達は進化的に保存された経路であり、細胞増殖やアポトーシス、幹細胞の自己複製を制御することで臓器のサイズを規定しています。また、Hippoパスウェイの調節不全はがんの発生にも関与します。

- YAPTAZはHippoシグナル伝達を媒介する重要な分子です。転写のコアクチベーターであるYAPは複数のリン酸化部位を持ち、これらがリン酸化されることで核から細胞質へ移行します。
- Hippo経路はYAPのリン酸化を制御し、これがオフになることでYAPが核内に移行します。YAPは核内でTEADなどの様々な転写因子と相互作用し、YAP/TEAD複合体は細胞の増殖やアポトーシスの関与する遺伝子の発現を制御します。

Wnt/β-Cateninシグナル伝達も進化的に保存された機構であり、幹細胞の多能性や発生における細胞の運命決定を制御しています。Wntシグナル伝達はがんに関与する転写制御因子 (TAZなど) の核への蓄積を促進することが示されており、がんの無制限な増殖に寄与すると考えられています。

- β-CateninはWntシグナルの重要なエフェクターであり、初期胚発生、腫瘍形成という脊椎動物の2つの重要な生物学的プロセスに関与します。Wntシグナルに応答してβ-Cateninは核に移行します。
- LEF1とTCFは遺伝子上のWnt応答エレメントに結合し、β-Cateninのドッキング部位を形成します。こうして核に移行したβ-Cateninは標的遺伝子の転写を促進します。

無秩序な複製による不死化に関与するパスウェイやタンパク質についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのリンクからパスウェイ図をご確認ください。

- Hippoシグナル伝達
- Wntシグナル伝達

 

がんの特性 (Hallmarks of cancer) はRobert Weinberg博士とDouglas Hanahan博士によって提唱され、2000年のCell誌に発表されたものです。彼らは、複雑ながんの性質を、より小さな特性に細分化して捉えることを提案しています。今回の記事では「無秩序な複製による不死化」と題し、がんの特性の1つに関連する内容を記載しました。本シリーズの他の記事では、今回触れなかった他の特性についても触れていきます。

  • Hanahan D, Weinberg RA (January 2000). "The Hallmarks of Cancer". Cell. 100 (1): 57–70. doi:10.1016/S0092-8674(00)81683-9
  • Hanahan D, Weinberg RA (March 2011). "Hallmarks of Cancer: the next generation". Cell. 144 (5):646-74. doi: 10.1016/j.cell.2011.02.013.

 

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