がんの特性:細胞死への抵抗性


Posted by CSTジャパン on 2019/05/15 6:00:00


「細胞死への抵抗性」、これはがん細胞の重要な特性のひとつです。異常な細胞を「制御された死」に導くメカニズムであるアポトーシスを、がん細胞は回避することができます。アポトーシスは通常、発生や成長の段階で細胞を適切に除去することで正常な組織を維持し、損傷を受けた細胞や病原体に感染した細胞を除去することで個体を健康な状態に保つメカニズムです。ところが、がん細胞はいくら異常な増殖をしても、アポトーシスによって除去されることがありません。

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つまり、がん細胞は、損傷を受けた細胞や異常な細胞を検知するメカニズムや、検知した情報からアポトーシスを誘導するシグナル伝達機構、あるいはアポトーシスを実行するタンパク質を阻害して、正常なアポトーシスを妨害していると考えることができます(1,2)

また、Hanahan博士とWeinberg博士によって提唱された「がんの特性」のひとつに挙げられている「増殖抑制の回避」においても、アポトーシスは重要な意味をもちます。細胞内外からのアポトーシス誘導刺激に対して、アポトーシス実行のプログラムを開始させないことが、がん細胞にとって重要であると言えます。

がん細胞が細胞死を免れる方法を明らかにするために、まずはアポトーシスを誘導し得る、様々な経路を精査する必要があります。

  1. Caspase-8:Caspase-8を活性化するいくつかのデスレセプターによって、アポトーシスが誘導されます。Caspase-8から活性型フラグメントが切り出され、放出されることで下流のCaspaseが活性化されます。
  2. RIPキナーゼ:RIPキナーゼは、細胞ストレスによって誘導されるNF-κBを介した生存維持や炎症反応のほか、アポトーシス促進経路の重要な制御分子です。
  3. Bcl-2:Bcl-2は、アポトーシスを誘導する様々な刺激に対し、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出を抑えることで、細胞の生存維持を行います。
  4. p53:p53は、DNA損傷やゲノム異常への細胞応答に重要な役割を果たすがん抑制タンパク質であり、「マスタースイッチ」と位置付けられています。p53の活性化によって、細胞周期の停止とDNA修復、もしくはアポトーシスが誘導されます。p53は複数の部位に、リン酸化やアセチル化といった翻訳語修飾を受けることが知られており、これらの反応の一部はChk2やATMによって触媒されます。

Resisting Cell Deathについてもっと詳しく知りたい方はこちら

がんの特性 (Hallmarks of cancer) はRobert Weinberg博士とDouglas Hanahan博士によって提唱され、2000年のCell誌に発表されたものです。彼らは、複雑ながんの性質を、より小さな特性 (増殖シグナルの維持、増殖抑制の回避、無秩序な複製による不死化、浸潤能および転移能の活性化、血管新生の誘導、細胞死への抵抗性) に細分化して捉えることを提案しています。今回の記事では、これらの特性の一部について記載しました。本シリーズの他の記事では、今回触れなかった他の特性についても触れていきます。

  1. Hanahan, D; Weinberg, RA (4 March 2011). "Hallmarks of cancer: the next generation". Cell144 (5): 646–74. doi:10.1016/j.cell.2011.02.013PMID 21376230
  2. Elmore, S (June 2007). "Apoptosis: a review of programmed cell death"Toxicologic Pathology35 (4): 495–516.  doi: 10.1080/01926230701320337PMC 2117903PMID 17562483

 

Topics: Cancer Research

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