LAB EXPECTATIONS

がんの特性:増殖シグナルの持続


Posted by CSTジャパン on 2019/10/01 6:00:00


がん細胞は自己増殖を促進することができます。つまり、細胞増殖に必要なパスウェイ (EGF/EGFRパスウェイなど) を外部刺激によらず、自ら活性化することができるようになります。細胞増殖は主にAkt、MAPK/Erk、MTORの3つのパスウェイに大きく依存します。

18-CEL-47850-Blog-Hallmarks-Cancer-4-Sustaining-Proliferative-Signaling

AktはPKB (Protein Kinase B) としても知られる代表的なセリン/スレオニンキナーゼファミリーの1つで、Akt1、Akt2、Akt3の3つのアイソフォームが知られています。Akt1 (v-Akt) は原がん遺伝子として発見されましたが、代謝や増殖、生存維持、転写、タンパク質合成など、様々な細胞機能の制御に重要な役割を果たしています。Aktは細胞内外の様々な刺激に応答して活性化され、この活性化に関与する最も重要な分子としては脂質キナーゼPI3K (phosphoinositide 3-kinase) が知られています。これは細胞の生存維持の主要な制御因子で、アポトーシスを促進するパスウェイやタンパク質 (FoxO1など) を阻害します。

MAPK (Mitogen activated protein kinase) は細胞の増殖や生存維持のシグナルを細胞表面の受容体から核へと伝える様々なシグナル伝達カスケードの中心的な役割を担っています。増殖因子による受容体型チロシンキナーゼの活性化、インテグリンの作用、あるいは細胞のホメオスタシス変化 (ストレスなど) により、Erk (extracellular signal regulated kinase) やp38 MAPK、JNK (c-Jun N-terminal kinase) のシグナルが活性化されます。それぞれのキナーゼはその後、c-JunやEts、Alk、ATFなどの細胞分裂や生存維持、修復、増殖を制御する転写因子の活性化を促進します。

mTOR (mammalian target of rapamycin) はプロテインキナーゼの一種であり、ATPやアミノ酸のセンサーとして機能し、栄養素やエネルギーの供給状態と細胞増殖のバランスをとる役割を持ちます。また、mTORの活性は、AktやErk、AMPKなどが関与するパスウェイによって正負の制御を受けます。活性化されたmTORは一連の代謝酵素の制御や、脂質代謝や生合成、細胞の増殖分裂、オートファジーを調節するプロテインキナーゼの制御を行います。

増殖シグナルの持続についてもっと詳しく知りたい方は、次のリンクから関連タンパク質やシグナル伝達のパスウェイ図をご覧ください。

がんの特性 (Hallmarks of cancer) はRobert Weinberg博士とDouglas Hanahan博士によって提唱され、Cell誌に発表されたものです。彼らは複雑ながんの性質を、より小さな特性に細分化して捉えることを提案しています。今回の記事では「増殖シグナルの持続」と題し、がんの特性の1つに関連する内容を記載しました。本シリーズの他の記事では、今回触れなかった他の特性についても触れていきます。

参考文献:

  • Hanahan D, Weinberg RA (January 2000). "The Hallmarks of Cancer". Cell. 100 (1): 57–70. doi:10.1016/S0092-8674(00)81683-9
  • Hanahan D, Weinberg RA (March 2011). "Hallmarks of Cancer: the next generation". Cell. 144 (5):646-74. doi: 10.1016/j.cell.2011.02.013.

ブログ更新通知のご登録

最近の投稿