免疫蛍光染色の成功のために:抗体の希釈と反応条件


Posted by CSTジャパン on 2018/02/15 6:00:00


本記事はIFシリーズ、4部構成の第4回です。「抗体の検証の重要性」「実験のコントロール」「固定と透過化処理」もご覧ください。

サンプルの準備が整ったら、いよいよ、十分に検証された免疫蛍光染色用の抗体を反応させる時間です。IF実験に習熟されている研究者なら、恐らくはデータシートやWebページで推奨希釈率を確認されることでしょう。しかし、こうした情報がどのような根拠によるものか、疑問に思ったことはありませんか?


一次抗体のタイトレーション

CSTは、バックグラウンドを最小限に抑えつつ最適なシグナルを得ることができる推奨希釈率を提示するため、陽性細胞株と陰性細胞株を用いて日常的にタイトレーションを行っています。標的タンパク質を発現しない細胞の「バックグラウンドノイズ」 (Negative Mean Fluorescence Intensity, MFI(-)) と、目的の標的タンパク質を発現する細胞における蛍光輝度 (Positive Mean Fluorescence Intensity, MFI(+)) を比較することにより、シグナル/ノイズ (S/N) 比を算出することができます。

下図はMucin-1 (MUC-1) 抗体を用いたタイトレーションの一例です。赤枠で囲まれているのが最適濃度/ 推奨希釈率です。Mucin-1を発現するZR-75-1細胞を上段に、Mucin-1を発現しないHCT 116細胞を下段に示しました。IF画像や定量解析の結果からわかるように、赤枠で囲まれた推奨希釈率では、ZR-75-1細胞で高いシグナルが観察され、HCT 116細胞ではほとんどバックグラウンド (すなわちノイズ) が観察されません。

Mucin-1 detection and optimization of antibody dilution

#14161 MUC1 (D9O8K) XP® Rabbit mAb濃度のIF解析への最適化。ZR-75-1細胞 (MUC1陽性、上段) とHCT 116細胞 (MUC-1陰性、下段) の共焦点IF解析:#14161 (緑) を記載の希釈率で染色。赤 = #4087 Propidium Iodide (PI)/RNase Staining Solution。

ZR-75-1細胞のMFI(+)、HCT 116細胞のMFI(-)、MFI(+) をMFI(-) で割り算したS/N比を示したプロットを下図に示します。

IF_blog_conc_graph.jpg

#14161 MUC1 (D9O8K) XP® Rabbit mAbの希釈に応じたS/N比の解析。標的タンパク質を発現するZR-75-1細胞のMFI(+) (オレンジ)、発現しないHCT 116細胞のMFI(-) (青)、S/N比 (緑)。

抗体の濃度が低すぎる場合、蛍光シグナルが不鮮明になり、バックグラウンドノイズと区別ができなくなります。反対に、濃度が高すぎると、バックグラウンドレベルが上昇してS/N比は低下します。データシートに記載されている抗体の推奨希釈率を必ずご確認ください。

一次抗体の反応条件

CSTの一次抗体の希釈率は、すべて4°Cで一晩反応させることを前提に設定されています。ただし、CST抗体が短時間の反応で機能しないわけではありません。自動化されたプラットフォームでは、短時間の抗体反応がしばしば行われています。反応時間の短さを補うために、一次抗体濃度を高くすることも可能ですが、これにはコストがかかります。また、反応温度も変更する必要があります。次に紹介するのは、反応時間ならびに温度が、シグナル強度に与える影響を調べた実験です。

間葉系のSNB-19細胞は、中間径フィラメントのVimentinを発現しますが接着分子であるE-Cadherinを発現しません。一方、上皮系のHT-29細胞は、E-Cadherinを発現しますがVimentinは発現しません。両細胞について、#5741 Vimentin (D21H3) XP® Rabbit mAb#3195 E-Cadherin (24E10) Rabbit mAbを、推奨希釈率で反応温度を振って試験しました。

Vimentin陽性のSNB-19細胞における#5741のシグナル強度は、推奨反応条件である4°C/一晩の条件において最適なシグナルレベルが認められた一方で、高温/短時間の反応ではシグナルが著しく低下しました。比較対象として、Vimentin陰性のHT-29細胞を#5741で一晩染色したデータも示しています。

Vimentin陽性SNB-19細胞とVimentin陰性HT-29細胞の共焦点IF解析。#5741 Vimentin (D21H3) XP® Rabbit mAb (白) で染色。推奨希釈率での一次抗体反応を4°C、21°C、37°Cで、1時間または一晩 (O/N) 実施。CSTが推奨する一次抗体反応条件下 (4°C、一晩) ではバックグラウンドがほとんどなく、最大のシグナルが得られました (赤枠内)。青 = #4082 Hoechst 33342。

Vimentin陽性細胞における#5741 Vimentin (D21H3) XP® Rabbit mAbのシグナルレベルのハイスループットレーザー走査型イメージングサイトメーターによる定量解析によって、MFI(+) がO/Nインキュベーション (左下図) で増加することが示されます。1時間または2時間のインキュベーションでは、温度を上げることでMFI(+) とS/N比が上昇するものの、O/Nインキュベーションに匹敵するほどではありません。

#3195 E-cadherin (24E10) Rabbit mAbについては、#5741ほど顕著ではありませんが、4℃と21℃においてO/NインキュベーションでMFI(+) とS/N比が上昇します (右下図)。興味深いことに、温度上昇 (37℃) は、O/NインキュベーションにおけるMFI(+) とS/N比の低下をもたらしており、これは抗原内のエピトープと抗体の結合の喪失によるものと考えられます。この現象がVimentin抗体で観察されないのは、おそらくVimentin中間径フィラメントの安定性が高いためと考えられます。#3195のS/N比がもっとも高くなるのは高温でインキュベーションした時ですが、4℃でO/Nインキュベーションも最適条件に近く、S/N比は十分に良好です。

 5741 3195 experiment.png

すべての抗体が温度やインキュベーション時間の変更に対して同じ応答を示す訳ではありません。より短いインキュベーション時間に興味のある研究者にとっては (例えば多検体のハイスループット解析を行う方)、このようなタイプの最適化を行うことはとても有益なことです。インキュベーション時間を短縮したり、温度を変更する際には、標的タンパク質の存在量や抗体の安定性を慎重に考慮する必要があります。

「免疫蛍光染色の成功のために」シリーズの記事をご覧いただきありがとうございます。IFを成功させるためのヒントやプロトコールの重要な9ステップを掲載したIFガイド (日本語版) も併せてご参照ください。

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IFガイドを既にお持ちの方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

XPはCell Signaling Technology, Inc.の商標です。

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