多発性骨髄腫の治療標的として有望なMaturation Antigen (BCMA)


Posted by CSTジャパン on 2018/10/15 6:00:00


多発性骨髄腫 (MM) は造血悪性腫瘍の一種であり、骨の痛みや貧血、腎不全、再発感染といった特徴があります。この疾患を引き起こす根本的なメカニズムは、骨髄中に異常な抗体を大量に分泌する悪性形質細胞の異常増殖と蓄積とされています。

MMは治療法が確立していますがその効果は限定的です。プロテアソーム阻害剤や幹細胞移植は患者の生存を有意に改善するものの、時間経過と共に再発し、化学療法剤に対する耐性を獲得することが問題となっています。MMの発生率は増加し続けており、研究者および臨床医は、再発性・難治性MMの新規治療法開発に精力的に取り組んでいます。

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MM治療法を臨床展開するための長い道のりは、形質細胞の増殖と生存の促進にクリティカルに関与する新規治療標的を同定し、特徴付けることから始まります。これまでに、TACIやCD138/Syndecan-1、CD38、SLAMF7/CRACCなどの悪性形質細胞の表面抗原が、前臨床および臨床研究の標的抗原として追究されてきました。しかしながら、これらの抗原は形質細胞以外にも発現するため、これらの抗原を標的とする薬剤の治療効果を限定的なものとしてしまう恐れがあります。

より選択的な治療候補として大きく注目されている抗原のひとつに、B-cell maturation antigen (BCMA/TNFRSF17/CD269) があります。BCMAは、TNFRスーパーファミリーに属する膜貫通タンパク質であり、ほぼ形質芽細胞と分化した形質細胞の表面上にのみ発現しています。骨髄のアクセサリー細胞によって産生される同種リガンドAPRILに呼応して、BCMAは長期生存型骨髄形質細胞に生存シグナルを伝達し、その維持に重要な役割を果たします。BCMAは正常な形質細胞においても、体液性免疫応答の維持に重要な役割を果たしますが、MM患者の骨髄悪性形質細胞の表面上で異常に過剰発現します。MM患者では、悪性形質細胞においてAPRIL-BCMAシグナル伝達軸が過剰に活性化しており、IL-10、PD-L1およびTGF-βなどの強力な免疫抑制分子の産生とアポトーシス抵抗性の増殖が誘導されます。

BCMAが悪性形質細胞の生存を促進し、その発現が形質細胞区画に大きく限定されていることから、この分子はMMの病態生理学における重要なノードとして位置づけられています。結果として、APRIL-BCMAシグナル伝達軸を標的とすることは、近年の免疫療法の世界において最も重要な課題となっています (1)。実際、再発性および難治性MMの患者の骨髄を埋め尽くすほど増殖した悪性BCMA陽性形質細胞を根絶するために、新規の免疫療法ベースのアプローチが積極的に探究されています。BCMAを標的とする抗体薬物複合体 (ADC) やキメラ抗原受容体T細胞 (CAR-T) は、強力な治療法として脚光を浴びつつあります。これらの薬剤の早期の治験段階での顕著な有効性が認められたとして、2017年に米国FDAは、GSK社の抗BCMA ADC (GSK2857916) とCelgene社/Bluebird Bio社の抗BCMA CAR-T療法 (bb2121) をBreakthrough Therapy Designationに指定しました。

B細胞悪性腫瘍を対象とした2件のCD19標的CAR-T療法が2017年にFDAに承認され、CAR-T免疫療法への期待がエスカレートされました。MMを対象としたBCMAを標的としたCAR-TがFDAに承認される可能性は十分にありますが、この療法を臨床展開するためにはより多くの研究が必要です。免疫療法と、それらの組み合わせのレパートリー (T細胞療法、チェックポイント阻害、モノクローナル抗体、およびワクチン) が増えるにつれて治癒の可能性も広がります。

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参考文献:

Ormhøj, M. et al. (2017) Curr Hematol Malig Rep.     PUBMED ID: 28233151

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