ビデオ: Understanding Macrophages in the Tumor Microenvironment


Posted by CSTジャパン on 2018/11/15 6:00:00


マクロファージの可塑性に関する研究動向

いくつもの細胞タイプの発見を通して新たな効果予測バイオマーカーの候補が提唱されるなど、腫瘍免疫学研究が脚光を浴びています。今回ご紹介する5分間のビデオでは、腫瘍随伴マクロファージ (TAM) の可塑性や、M1型とM2型マクロファージの区別に関する課題について、CSTのDevelopment ScientistであるSarah Klein博士がお話しします。

ビデオが視聴できない方はこちらをクリック

免疫系は、体の中の正常で健康な細胞とがん細胞を区別することができます。しかし困ったことに、がん細胞は免疫系による攻撃を避ける方法をしばしば見つけ出します。この回避は、がん細胞が腫瘍微小環境においてPD-1IDOなどの免疫抑制タンパク質の発現を上昇させることによって起こります。

過去15年間、免疫抑制タンパク質を特異的にブロックする治療法が、T細胞と適応免疫応答を活性化し、がん治療において有効であることが示されてきました。この成功に基づいて、マクロファージや樹状細胞などの自然免疫系を標的とした治療法が、前臨床や臨床試験に入っています。

Immune Checkpoint Signaling Pathway

免疫チェックポイントシグナリング インタラクティブパスウェイはこちらをクリック

免疫療法がかつてないほどの成功を収めているにも関わらず、科学者たちはより良い治療法を開発しようと尽力しています。というのも、全ての患者に対して治療が有効なわけではないからです。そのため、科学者たちは、免疫療法が効く患者を事前に予測できるバイオマーカーを同定しようとしています。そうすることによって、患者は成功確率の高いテーラーメイド医療を受けることができます。このいわゆる効果予測バイオマーカーとして、PD-L1などの免疫抑制タンパク質や、腫瘍随伴マクロファージ (TAM) などの免疫抑制型の細胞の蓄積が考えられています。

マクロファージは、がん細胞の発生と維持だけでなく、根絶にも重要な役割を担うことが知られています。一般的に、腫瘍微小環境や創傷治癒部に存在するマクロファージは、M1型またはM2型と呼ばれる機能的に異なる2つのタイプに極性化することが知られています。古典的活性化マクロファージとも呼ばれるM1型マクロファージは、インターフェロンγなどのサイトカインによって活性化され、インターロイキン12やインターロイキン23などの炎症誘発・免疫刺激性サイトカインを産生します。これまでの研究により、M1マクロファージが貪食した腫瘍細胞を除去、破壊するとともに、Th1細胞応答を刺激することによって、抗腫瘍特性を発揮することが立証されています。

選択的活性化マクロファージとも呼ばれるM2型マクロファージは、インターロイキン4やインターロイキン10、インターロイキン13などのサイトカインによって活性化されます。多くの腫瘍随伴マクロファージ (TAM) はM2型マクロファージに似た性質を有すると考えられており、がんと炎症との関係において重要な役割を担っています。TAMは、M1型マクロファージで発現しているような分子群よりも、抗炎症性サイトカインやスカベンジャーレセプター、血管新生因子、プロテアーゼなどを高発現しています。TAMは免疫抑制性の微小環境をリプログラミングして、腫瘍細胞の増殖や浸潤、転移を促進することができます。さらに、腫瘍血管新生を刺激し、T細胞による抗腫瘍免疫応答を阻害することもできます。TAMと悪性腫瘍の関係がより明らかになるにつれ、TAMは、がんの診断、予後予測のバイオマーカーとしてだけでなく、治療標的にもなり得ることが示されています。こうした理由から、M1型とM2型マクロファージを明確に区別することが非常に重要であることがわかります。

Understanding Macrophages still 3-1

実際、M1とM2の機能状態は2つの極端な連続体として存在しており、そのバランスは、腫瘍微小環境におけるサイトカインレベルの高低によって変わります。さらに、マクロファージは可塑性を有するため、適切な環境下で適切な刺激を受ければ、M1型からM2型に変換、あるいはその逆も同様に起こり得ます。

この知見は、これらマクロファージの細胞タイプの区別が非常に困難であることを示しています。M1型またはM2型を同定するためには複数のマーカーを使用しなくてはならず、フローサイトメトリー、免疫蛍光染色、免疫組織化学染色のいずれにおいてもマルチプレックス染色を行う必要があります。それぞれの機能状態に固有のいくつかのタンパク質が同定されていますが、より正確で特異的なマーカーの探索が精力的に続けられています。マクロファージの機能を制御するタンパク質の多くは細胞内に存在するために、細胞外染色だけでの同定は難しく、細胞内と細胞外を同時に検出する複雑な染色方法が必要です。

マウスモデルとヒトの間で、M1とM2の機能状態に関与する重要なタンパク質のいくつかが異なるために、前臨床試験で明らかになったバイオバーカーを臨床に応用することが不可能になることがあります。これは難しい課題であり、自然免疫細胞、特にマクロファージの、がんや様々な疾患における役割を理解するために、精力的な研究が数多く進められています。

ご静聴ありがとうございました。CSTのYouTubeチャンネルWebサイトにもお役立ち情報をご用意していますので、ぜひそちらもご覧ください。

Reference:
Biswas and Mantovani (2010). Nat Immunol. 11(10):889-96.

ブログ更新通知のご登録

最近の投稿