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科学者が新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) と戦うためのツール


Posted by Cell Signaling Technology Japan on 2020/03/15 6:00:00


SARS-CoV-2 (重症急性呼吸器症候群-コロナウイルス-2、以前の名称はnCoV) を迅速に打ち負かし流行を止めるには、診断と治療が特に重要です。2020年1月31日の時点で、SARS-CoV-2を検出する7社のSARS-CoV-2核酸検出キットが承認されています (データ元:NMPA)。一方、研究者は効果的な治療法を開発するため懸命に働いています。


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中国科学アカデミー上海パスツール研究所 (他にも所属あり) の研究者であるHao Pei博士は、コンピューターシミュレーションにより、SARS-CoV-2とSARSウイルスはスパイクタンパク質 (Sタンパク質) の空間的な構造が類似していることから、SARS-CoV-2もSARSウイルスと同様に、ヒトの細胞表面受容体であるACE2に結合することで宿主細胞に侵入する可能性があることを報告しました。これは、MERS-CoVがDPP4を利用して宿主細胞に侵入するのとは異なります [1]。ACE2は、レニン-アンジオテンシンシグナル伝達経路においてACE/AngIIの生物活性のバランスをとるタンパク質です。この経路の阻害によりACE2を利用するSARSの症状は改善され、マウスでの実験ではSARSのSタンパク質によって引き起こされる肺損傷が軽減されました [2]。

ただし、ACE2がSARS-CoV-2が宿主細胞に侵入する唯一の手段であることを確認するには、さらなる研究が必要です。SARS-CoV-2がACE2を介して細胞に侵入しエンドサイトーシス経路に入った後、CathepsinがSタンパク質を分解してウイルスの核酸を放出します。いくつかの証拠から、Cathepsin B/L阻害剤はこのプロセスを阻害することが示されています。この研究により、SARS-CoV-2は膜貫通タンパク質であるTMPRSS2によって直接切断され、TMPRSS2のアンタゴニストはウイルスの細胞への侵入を阻害することも示されました [3]。

現在、世界をリードするいくつかのバイオテクノロジー企業と研究機関は、SARS-CoV-2に対するワクチンの探索と開発への参加を表明しています。薬物が治療効果を持つかどうかを調べる臨床試験は、現在、以下の戦略に基づいて行われています。一つはウイルスを標的とするもので、試験の対象となった一群の抗ウイルス薬をin vitroでスクリーニングします。Fabiravir、Lopinavir、Ritonavirなど、それらの一部は臨床試験まで進んでおり、アデノシン類似体であるRemdesivirは第III相臨床試験が始まっています。もう一つは宿主細胞を標的としたもので、インターフェロンやChloroquine、Nitazoxanideなどの低分子化合物が対象になっています [4]。さらに、宿主におけるエンドサイトーシス、増殖、ウイルスのアセンブリーの機構を制限する化合物を人工知能プログラムを用いて同定するのに、Baricitinib、Sunitinib、Erlotinibなどの阻害剤が調べられています [5]。

CSTには、十分に検証された研究用の抗体と低分子化合物があります。それらは、研究者がウイルス性疾患の病因を明らかにし、アッセイと治療薬の研究開発を進めるのに役立ちます。

宿主タンパク質に対する抗体

標的

製品番号

製品名

アプリケーション

交差性

注釈

ACE2

#4355

ACE2 Antibody

WB, IP

H

SARS-CoV-2とSARS-CoVの宿主受容体

DPP4

#67138

DPP4/CD26 (D6D8K) Rabbit mAb

WB, IP,IF

H

MERS-CoVの宿主受容体

#40134

DPP4/CD26 (D6D8K) Rabbit mAb (IHC Formulated)

IHC

H

AAK1

#79832

AAK1 Antibody

WB, IP

H M R

宿主のエンドサイトーシスを制御

Cathepsin B

#31718

Cathepsin B (D1C7Y) XP® Rabbit mAb

WB, IHC, IF, F

H M R

コロナウイルスのSタンパク質の加水分解に関与してウイルスの核酸を放出する可能性あり

#59355

Cathepsin B (D1C7Y) XP® Rabbit mAb (PE Conjugate)

F

H M R

#55279

Cathepsin B (D1C7Y) XP® Rabbit mAb (Alexa Fluor® 488 Conjugate)

IF

H M R

#3373

Cathepsin B (G60) Antibody

WB

H

#3383

Cathepsin B (H190) Antibody (Mouse Preferred)

WB

H M

IgM

#74293

IgM antibody

WB

H

SARS-CoV-2特異抗原と共に使用することで患者血液中のSARS-CoV-2特異IgMを検出

 

薬剤効果を知るのに役立つ可能性のある候補化合物

製品番号

化合物名

注釈

#14774

Chloroquine

オートファジーを阻害するリソソーム親和性薬剤で、in vitroでSARS-CoV-2を阻害 [6]

#12328

Sunitinib

PDGFR、VEGFR、KIT、FLT3を標的とするチロシンキナーゼ阻害剤

#5083

Erlotinib

EGFRキナーゼ経路におけるATP競合阻害剤

#15022

Carfilzomib

Epoxomycinに関連するプロテアーゼ阻害剤

 

潜伏期間、臨床症状および治療への反応について、COVID-19 (2019年のSARS-CoV-2の感染に起因するコロナウイルス病) はSARSといくつか類似点があります。COVID-19の患者99人を検査したところ、大部分の患者においてリンパ球の絶対値が減少していることが、Lancet誌の最新号に報告されました。この結果は、SARS-CoVと同様に、SARS-CoV-2が主にリンパ球、特にT細胞に影響を及ぼす可能性を示しています。ウイルス粒子は呼吸粘膜を介して拡散し、他の細胞に感染してサイトカインストームを誘発することで一連の免疫応答を引き起こし、末梢白血球やリンパ球などの免疫細胞を変化させると考えられています。一部の患者は、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) および敗血症性ショックを急発症し、最終的には多臓器不全を起こします [7]。

いくつかの研究から、コロナウイルスが多くの免疫細胞を消耗することでリンパ球の総数が著しく減少し、人体の細胞性免疫機能が阻害されることが示唆されています。T細胞の消耗は、患者の状態悪化の重要な要因なのかもしれません [8]。

上海中山病院のクリティカルメディシン部門の副部門長であるZhong Ming博士は、『南方人物周刊』でのインタビューにおいて、COVID-19はその後期に、サイトカインストーム、多臓器不全、心筋障害マーカーの増加を伴って悪化すると述べています。この病気の経過は、以前のSARSおよび鳥インフルエンザの患者とは異なります。SARSの患者は、後期ではなく、しばしば初期の段階で重篤な症状を呈します。このことから、T細胞の消耗、およびマクロファージとNK細胞の機能障害が、免疫応答の後期にサイトカインストームを引き起こす可能性があります。SARS-CoV-2感染後の宿主細胞や体内の他の免疫細胞の応答をより理解するには、さらなる研究が必要です。

ウイルスおよびサイトカイン応答に関与する免疫制御経路

Toll様受容体シグナル伝達

細胞内因性自然免疫シグナル伝達

B細胞受容体シグナル伝達

T細胞受容体シグナル伝達

インフラマソームシグナル伝達

Jak/Stat:IL-6受容体シグナル伝達

NF-κBシグナル伝達

ネクローシス

COVID-19の臨床イメージングに対する後ろ向き研究では [9]、CTスキャンにより疾患の進行、重症化、寛解などの段階で線維性病変が見られました。線維症経路の活性化は、肺機能の障害を引き起こす可能性があります。ACE2タンパク質の関与を念頭に置きながら、肝臓や腎臓などの他の臓器が損傷される可能性について解明するには、さらなる研究が必要です。

線維症に関連する経路

線維症のメカニズム

TGF-βシグナル伝達

細胞外マトリクスのEMTへの寄与

COVID-19の流行は最終的には消えていきます。現在の国際的な警戒態勢であれば、流行が終息するのは時間の問題です。しかし、患者と医療従事者にとって、この戦いは始まったばかりなのかもしれません。SARSを振り返ると、この疾患から回復した人のうち、肺の損傷は後遺症の一部に過ぎず、より深刻な懸念として、高用量ホルモン療法や他の治療によって引き起こされたと思われる大腿骨頭壊死があります。さらに、SARS患者と医療従事者が経験した心理的トラウマは、SARSの流行が終了してから何年も続きました [10-13]。

ネクローシスに関連する経路

ネクローシス

パイロトーシス

SARSの流行から17年が経過した後、SARS-CoV-2は再び私たちの生活と生産力に広範囲かつ壊滅的な打撃を加えています。過去の経験と学んだ教訓は、忘れてさえいなければ、将来への指針となるはずです。COVID-19の疫学、予防および治療について、私たちはこれまで多くのことを学んできましたが、この流行を制御するためには、学ぶべきことはまだたくさんあります。

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参考文献:

[1] Xintian Xu et al. Evolution of the novel coronavirus from the ongoing Wuhan outbreak and modeling of its spike protein for risk of human transmission.SCIENCE CHINA Life Sciences, https://doi.org/10.1007/s11427-020-1637-5

[2] Kuba, K., Imai, Y., Rao, S. et al. A crucial role of angiotensin converting enzyme 2 (ACE2) in SARS coronavirus–induced lung injury. Nat Med 11, 875–879 (2005). https://doi.org/10.1038/nm1267

[3] Hoffmann, M. et al. The novel coronavirus 2019 (2019-nCoV) uses the SARS-coronavirus receptor ACE2 and the cellular protease TMPRSS2 for entry into target cells. bioRxiv, 2020.2001.2031.929042, https://doi.org/10.1101/2020.01.31.929042

[4] Guangdi Li et al. Therapeutic options for the 2019 novel coronavirus (2019-nCoV). Nature Reviews Drug Discovery, 2020,  doi:10.1038/d41573-020-00016-0

[5] Peter Richardson et al. Baricitinib as potential treatment for 2019-CoV acute respiratory disease.The Lancet In press, 2020, doi: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30304-4

[6] Remdesivir and chloroquine effectively inhibit the recently emerged novel coronavirus (2019-nCoV) in vitro. Cell Research (2020) 0:1–3; https://doi.org/10.1038/s41422-020-0282-0

[7] Nanshan Chen, Min Zhou, Xuan Dong, Jieming Qu, Li Zhang. Epidemiological and clinical characteristics of 99 cases of 2019 novel coronavirus pneumonia in Wuhan, China: a descriptive study. The LancetIn press, corrected proof. Available online 30 January 2020. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30211-7

[8] T-cell immunity of SARS-CoV: Implications for vaccine development against MERS-CoV. Antiviral Research.Volume 137, January 2017, Pages 82-92. https://doi.org/10.1016/j.antiviral.2016.11.006

[9] Novel coronavirus pneumonia in Wuhan: clinical and imaging features, radiology practice, 2019. DOI:10.13609/j.cnki.1000G0313.2020.02.001

[10] Stress and Psychological Distress Among SARS Survivors 1 Year After the OutbreakThe Canadian Journal of Psychiatry, Vol 52, No 4, April 2007DOI:10.1177/070674370705200405

[11]1-Year Pulmonary Function and Health Status in Survivors of Severe Acute Respiratory SyndromeCHEST, 128, 3, SEPTEMBER, 2005,DOI:S0012-3692(15)52164-8

[12] Mental Morbidities and Chronic Fatigue in Severe Acute Respiratory Syndrome Survivors Long-term Follow-up, Intern Med. 2009;169(22):2142-2147. doi:10.1001/archinternmed.2009.384

[13] SARS 10 years later: How are survivors faring now? Global News, https://globalnews.ca/news/404562/sars-10-years-later-how-are-survivors-faring-now/

 

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